「バルブの種類と特徴が知りたい」
「種類ごとの用途や選び方も教えてほしい」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在はメーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、バルブ選定の基本となる「バルブの種類と特徴」を紹介します。
この記事を読むとわかること。
- バルブの種類と特徴がわかる
- バルブによる構造の違いがわかる
- 種類ごとの用途・選び方がわかる
流体を扱う機器や装置で必ず必要となるバルブ。
バルブには様々な種類があり、それぞれ構造や用途が異なるので、使用条件に合ったバルブを選定することが大切です。
そこで本記事では、バルブの種類と特徴をわかりやすく解説します。
種類ごとに用途の違いや選び方も紹介するので、適切なバルブを選定できるようになるはず。
ぜひ参考にしてください。
バルブの種類7つ
今回紹介するのは、全部で7つ。
細かく分けるともっとたくさんありますが、ここでは基本の7種類を紹介します。
ゲートバルブ(仕切弁)
ゲートバルブは、流体を「流す・止める」のON/OFFで制御する止め弁です。
弁体でゲートのように流体を仕切る構造で、仕切弁とも呼ばれます。
バルブ全開時は流路に弁体が残らないのが特徴。
圧力損失が小さくなるため幅広く利用されてきました。
バルブ開閉時に駆動して、流体の流量を調整する部分。
ゲートバルブの特徴
- 止め弁として使用
- 圧力損失が小さい
- バルブ内にキャビティがある
- バルブの全丈が大きくなる
- 中大口径になると大きい・重い(経済性に劣る)
バルブ内にできる隙間のこと。
流体が入り込み凍結や異常昇圧などのトラブルにつながる可能性がある。
ゲートバルブの用途
ゲートバルブは、流体の遮断用のバルブとして全開・全閉の状態で使用します。
中間開度で使用すると、チャタリングが発生して性能が低下するため注意が必要。
また、急速な開閉や頻繁な開閉操作をしない部位に使用するのが一般的です。
流体の力で弁体が振動し、弁座とぶつかり合う現象。
弁体や弁座が損傷して、流体のリーク(漏れ)につながる。
グローブバルブ(玉形弁・ストップバルブ)
グローブバルブは、流す・止めるの2制御にくわえて、流路を絞ることで流量を調整することも可能。
止め弁、絞り弁の代表としてよく使われます。
構造ですが、ハンドルを回転させることで弁体が上下し、流量を調整します。
ゲートバルブと違いバルブ内で流路が曲がっていて、さらに弁体が流路に残るため、圧力損失が大きくなってしまうのがデメリットです。
グローブバルブの特徴
- 止め弁、絞り弁として使用
- 圧力損失が大きい
- キャビティがなく、異常昇圧が起きにくい
- 中大口径になると大きい・重い(経済性に劣る)
グローブバルブの用途
グローブバルブは、封止性を重視する箇所や流量・圧力を制御したい箇所に使用します。
低開度ではチャタリングやエロージョンが発生するため、必要な流量や圧力から適切なサイズ・容量係数のバルブを選定する必要があります。
また、圧力損失が大きいため、配管の途中にある「単なる遮断弁」には用いないようにしましょう。
流体が配管内面(バルブ内面)をこすることで生じる機械的な摩耗のこと。
流路が曲がっていたり、流速が大きい箇所で発生しやすい。
ボールバルブ
ボールバルブは、穴のあいた球状の弁体が回転することで、開閉動作を行うバルブです。
原則止め弁として使用し、流量を調整する絞り弁としては使いません。
ボールバルブは比較的新しく開発されたバルブですが、軽量でコンパクトなため経済性に優れており、ゲートバルブに代わって止め弁の代表として用いられるようになってきました。
また、弁棒を90度回転させるだけで開閉できるため自動化しやすく、電気や空気圧を用いた自動開閉弁としても用いられます。
ボールバルブの特徴
- 止め弁として使用
- 小型・軽量・経済性に優れる
- 圧力損失が小さい
- 手動・自動開閉弁の2種類がある
- バルブ内にキャビティがある
ボールバルブの用途
ボールバルブは、流体を遮断する止め弁として用います。
圧力損失が少ないため、様々な箇所で幅広く使えるのが特徴です。
ただし、ハンドルを固定せずに中間開度で使用すると、バルブが閉まる方向に力がかかるため注意が必要。
また、バルブ内にはキャビティがあるため、流体の残存や異常昇圧などへの対策が必要になります。
バタフライバルブ(蝶弁)
バタフライバルブは、円板状の弁体を回転させて開閉動作を行うバルブです。
回転角度を調整することで、流体の遮断・流量調整ができます。
こちらもボールバルブ同様、軽量でコンパクトなため経済性に優れており、開閉動作が容易なため自動開閉弁としても用いられます。
バタフライバルブの特徴
- 止め弁、絞り弁として使用
- 小型・軽量・経済性に優れる
- 圧力損失が小さめ
- 手動・自動開閉弁の2種類がある
- キャビティがなく、異常昇圧が起きにくい
バタフライバルブの用途
バタフライバルブは、流量調整に優れており、止め弁・絞り弁の両方の用途で使用できるバルブです。
また、バルブの開閉も手動・自動の両方が適用できるので、さまざまな箇所に幅広く使えます。
ダイヤフラムバルブ
ダイヤフラムバルブは、ダイヤフラムと呼ばれる弾性体の隔膜を使って流路を仕切るバルブです。
駆動部と流路がダイヤフラムで完全に隔離されているのが特徴。
使用する流体に合わせて、弁箱(バルブ本体)やダイヤフラムの材質を選定する必要があります。
ダイヤフラムバルブの特徴
- 止め弁として使用(一部、絞り弁としても使われる)
- 低圧用(0.5MPa以下程度)
ダイヤフラムバルブの用途
腐食性が高い流体に向いているため、化学・半導体・食品・飲料・医療など、幅広い分野に使用されます。
さきほど言ったように、ダイヤフラムの材質によって使用条件に制限があるため、選定時は注意が必要です。
また、低圧用(0.5MPa以下程度)のため、高圧下での使用には向いていません。
チェックバルブ(逆止弁)
ここまで紹介してきたバルブと違って、チェックバルブは、流体の「逆流」を防止するためのバルブです。
そのため、基本的には、流体の遮断や流量調整としての機能はありません。
チェックバルブの構造ですが、グローブバルブと同じく弁体を押し付けることで逆流を防ぎます。
ほかのバルブのように開閉するためのハンドルやレバーはなく、流体自身の逆流圧力を利用して自力で閉止するのが特徴です。
弁体の押し付け方法の違いによって、スイング式、リフト式、、などの種類があります。
チェックバルブの特徴
- 流体の逆流防止として使用
- 自力で閉止する構造
チェックバルブの使い方
自力で閉止する構造のため、逆圧(背圧)が低いと漏れやすく、選定時は注意が必要です。
また、逆圧を利用するので、配管やバルブの取り付け姿勢にも制限があります。
逆流を完全に止めることはできないため、ある程度漏れることを前提として設計を行わなければいけません。
バルブの操作方法による違い
バルブの種類は、構造の違いだけでなく、操作方法の違いによっても分けられます。
ハンドルやレバーを手で操作する手動バルブは、安価ですが、手が入るスペースが必要といった制約があります。
また、操作に力を要したり、時間がかかってしまうというデメリットも。
一方、バルブの開閉を自動化すると、遠隔で容易に素早く操作できるのがメリットです。
自動バルブの動力源としては、空気圧・油圧・水圧・電気などがあります。
油圧式バルブは、操作圧力が空気圧(0.2MPa〜0.7MPa)に比べて高い(14〜35MPa)ため、小型のシリンダでも高出力が得られるのが特徴です。
ただし、構造として複雑で、油を回収する必要もあるため全体としてのコストは高くなります。
そのため、一部の特殊な用途に限定して使用されています。
また、電動式バルブは、空気圧原が確保しにくい工場やビルの動力室などで使用されています。
開閉速度が空気圧に比べると遅く、経済性や耐久性に劣るという問題がありましたが、モータや電子部品の改善とともに普及してきました。
電磁弁(ソレノイドバルブ)とは
さいごに、電動式バルブの一種である電磁弁について紹介して、記事を終わりたいと思います。
電磁弁とは、電磁石(ソレノイド)の磁力を利用して弁を開閉させるバルブです。
モータで駆動する電動弁と比べて、電磁弁は応答速度が速いのが特徴。
ソレノイドの種類によって、速度をコントロールすることができます。
構造上、全開か全閉の状態しか保持できないON-OFF弁で、基本的には遮断用の止め弁として用いられます。
電磁弁の特徴
- 電磁石の磁力を利用して動作
- 電動弁と比べて応答速度が速い
- 止め弁として使用
- 経済性に優れる
- さまざまな流体に使用可能
電磁弁の用途
経済性に優れるため、電動弁の8割は電磁弁です。
使用できる流体の種類も水、空気、油、都市ガスなど幅広く、家庭用・工業用問わず利用されています。
ちなみに、電磁弁の故障は異物混入やメンテナンス不良などがの第一原因として挙げられます。
そこで、ストレーナーと呼ばれる流路内のゴミを取り除くフィルタを設置したり、定期的なメンテナンスが必要になります。
まとめ:用途に応じて適切な種類のバルブを選定しよう!
記事の内容をまとめます。
- ゲートバルブは、弁体で流路を仕切る止め弁
- グローブバルブは、弁体を上下させて流量を調整する止め弁・絞り弁
- ボールバルブは、穴のあいた球状の弁体を回転させて流体を遮断する止め弁
- バタフライバルブは、円板状の弁体を回転させて流量を調整する止め弁・絞り弁
- ダイヤフラムバルブは、ダイヤフラム(隔膜)で流路を仕切る止め弁
- チェックバルブは、逆流を防ぐ逆止弁
- 電磁弁は、電磁石の磁力を使ってON-OFF制御する止め弁
以上です。
今回は、バルブの種類を構造と操作方法の2つにわけて説明しました。
バルブを選ぶ時は、使用条件やコストに応じて、最適な種類のバルブを選定することが大切。
バルブの選定で悩んでいる方は、ぜひ今回紹介した内容を参考にしてください!
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