「半導体プロセスについて勉強したい」
「イオン注入ってどんなプロセス?」
「役割や仕組みを教えてほしい」
このような疑問にお答えします。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、半導体製造装置を学ぶ第2ステップとして「イオン注入装置の特徴」をわかりやすく解説します。
この記事を読むとわかること。
- イオン注入装置の役割がわかる
- イオン注入装置の仕組みがわかる
イオン注入は、シリコン半導体をトランジスタとして動作させるのに必要な工程。
簡単に言うと、シリコン結晶中にイオンを打ち込むプロセスです。
今回は、そんなイオン注入の役割やイオン注入装置の仕組みを初心者にもわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
イオン注入とは
さきほど言ったとおり、イオン注入とは、シリコン結晶中にイオンを打ち込む工程。
半導体の原材料として用いられるシリコンは、価電子(原子の最外周にある電子)が4個の元素です。
シリコンの単結晶では、この4個の価電子を隣り合うシリコン原子同士で共有し、安定な結晶をつくっています。
この安定した状態のシリコンは、ほとんど電気を通しません。
そこで、価電子が4個のシリコンに、価電子が5個の原子(リンPやホウ素Bなど)を不純物として加えます。
すると、価電子が1個余って自由電子となり、電気が流れるようになるのです。
このシリコン結晶中に、不純物としてイオンを打ち込むのに使われるのがイオン注入装置です。
イオン注入の後には、結晶回復のための熱処理が必要になります。
イオン注入装置の仕組み
つづいて、イオン注入装置の構造を簡単に説明します。
イオン注入装置の構成は上図のとおり。
大きく分けると5つの要素で構成されています。
- イオン源・・・ガス分子に電子を衝突させて、イオンを生成させる
- 質量分離部・・・不要なイオンを、電場と磁場の力で除去する
- 加速部・・・高電圧を印加し、イオン注入に必要なエネルギーを付加する
- ビーム走査部・・・イオンビームを整形して、ウェーハ全体に打ち込むためのビームをスキャンする
- イオン注入室・・・ウェーハにイオンを打ち込む
質量分離部や加速部、ビーム走査部などは、半導体製造装置の中でも複雑な機構です。
そのため、イオン注入装置は大型で価格も高価になります。
まとめ:イオン注入装置はシリコン結晶に不純物を打ち込む装置
記事の内容をまとめます。
- シリコンの単結晶は、そのままだと安定していて電気をほとんど通さない
- シリコン結晶に不純物を加えることで、電気を通すようになる
- イオン注入装置は、シリコン結晶に不純物としてイオンを打ち込む装置
- イオン注入装置は、イオン源・質量分離部・加速部・ビーム走査部・イオン注入室で構成される
- イオン注入装置は複雑な機構のため、大型で価格も高価
以上です。
今回は、半導体プロセスの中のイオン注入の工程を説明しました。
イオン注入は結晶回復のための熱処理とセットで使われるので、次に説明する熱処理装置も合わせて勉強しておくと理解が深まります!
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