こんにちは、機械エンジニアのはくです。
本記事では、製図学習の第3ステップである「寸法公差の書き方」について解説します。
この記事を読むとできるようになること。
- 寸法公差とは何かがわかる
- 寸法公差の書き方がわかる
- 部品同士の干渉や不具合を減らせる
- コストを意識した設計ができる
本記事の対象読者は下記です。
- 機械設計0〜3年目の方
- CADオペレーター0〜3年目の方
- 部品の不具合を減らしたい方
- 部品のコストダウンをしたい方
僕が実際に業務で教わったことや、上司に注意されたことをもとに、具体例を使ってわかりやすく解説していきます。
すべて現役の機械設計士である僕が経験した内容ですので、信頼性は保証します。
「寸法公差の理解があいまい…」「公差の書き方がわからない」という方に、ぜひ読んでもらいたい内容です。
前回の記事はこちら。
寸法公差とは
寸法公差とは、部品の寸法に対して許容される誤差の範囲のこと。
たとえば、以下の図で言うと「±0.1」や「±0.05」の部分が寸法公差です。
機械加工では、部品を寸法通りピッタリに加工することはできません。
実際は工作機械のばらつきによる誤差がありますから、たとえば、寸法50mmは50.03mmや49.98mmだったりします。
そこで、「50±0.1mm」のように寸法公差を指定することで、「誤差を0.1mm以内(寸法49.9mm~50.1mm)に収めて加工してください」と指示するのです。
寸法公差が重要な理由
さきほどの例のように、単純な部品の場合は、寸法公差はそこまで重要ではありません。
しかしながら、複数部品が組み合わさった製品の場合、「公差の積み上げ」によって誤差が大きくなり、部品がうまく組み立てられないことも。
以下はその一例です。
A、Bという2つの部品が、点Cでネジ固定されています。
このとき、点Cでネジが締結できるためには、AとBの穴の位置が同じである必要があります。
図で描くと以下のイメージです。
A、Bの穴位置は、それぞれ左の基準点からの寸法で指示されていますから、一般公差m級の場合、寸法はそれぞれ「A:475 ± 0.8 mm」「B:475 ± 2.9 mm」です。(一般公差についてはのちほど説明します。)
おなじ475mmという長さなのに、寸法公差を指定していないと、誤差の範囲がかなり変わってくることがわかると思います。
このように、寸法公差を指定していないと、2つの部品の位置がズレて、ネジが入らない、部品同士が干渉するといった不具合が発生します。
こうしたトラブルを防ぐためにも、適切な寸法公差を指示できるのが、良い設計士です。
寸法公差を指示する時の注意点
とはいえ、寸法公差は何でもかんでも入れておけばいいというわけではありません。
不必要に厳しい寸法公差を指定すると、加工に時間がかかるし、コストも高くなるからです。
したがって、寸法公差を指定するときは、以下の2点を意識することが大切。
- 加工コスト
- 累積公差
加工コスト
さきほど言ったように、公差が厳しければ厳しいほど、加工時間とコストは大きくなります。
これは、部品を加工し終わったら、寸法公差どおりに仕上がっているかどうかをチェックする検査工程が入るためです。
たとえば、公差が緩ければ、検査はたいてい一回で合格します。
最近の工作機械の精度は高いですから、後で説明する一般公差くらいなら、特に問題はありません。
しかしながら、公差が厳しいと、加工→検査NG→再加工、、、という工程を繰り返すことになるので、時間もコストもかかります。
したがって、加工時間とコストを抑えるためには、本当に必要な箇所のみ寸法公差を指示することが重要です。
累積公差
では、具体的に公差の指示が必要な箇所とはどこになるでしょうか。
ここで大切になってくるのが、累積公差という考え方です。
累積公差とは、その名のとおり「公差の積み上げ」のこと。
寸法は基本的に基準点からの距離で指定しますから、基準点から遠いものほど公差が積み重なって誤差が大きくなります。
そこで公差を指示する時は、単純にその部分だけ考えるのではなく、累積公差を考慮することが大切です。
ちなみに、基準点がわからない方は前回の記事をどうぞ。
たとえば、さきほどの例では、点Cの寸法はA、Bどちらも475mmです。
しかしながら、AとBでは寸法の取り方が異なります。
Aは基準点からの距離で指示しているのに対し、Bは溝の端部からの距離で表されています。
したがって、後で説明する一般公差を考慮すると、Aの公差は単純に「475 ± 0.8 mm」ですが、Bは溝の公差も加わって「475 ± 2.9 mm」となるのです。
もちろん、すべての公差が最大値になることはめったにありませんが、今回のケースだと組み合わせ次第では部品がつかない可能性もあります。
寸法公差を考慮して、どんな公差でも確実に干渉しない設計にしておくこと。
これが設計の不具合を減らすためのポイントです。
寸法公差の書き方
ここからは、具体的な寸法公差の書き方を説明していきます。
とは言っても書き方は簡単で、以下の3種類を覚えておけばOK。
①は単純に、基準寸法50mmに対し「49.8〜50.2mm」までは許容するよという意味です。
また、②、③はそれぞれ「50〜50.4mm」「49.6〜50.1mm」に収めて加工してねという意味。
実際に使う場合は、欲しい形状に合わせて±◯◯の部分を変更すればOKです。
ただし、「±0.01mm」のように公差が厳し過ぎるのはNG。
前半で説明したようにコストが高くなってしまいますし、そもそも加工できない場合もあります。
不必要な公差は指示しないこと。
寸法公差では、上記を意識して図面を描きましょう。
一般公差とは
さいごに、一般公差について説明します。
一般公差とは、「寸法がいくつまでの範囲は公差◯◯で加工してください」という基準のことで、普通公差とも言います。
基本的に図面にはたくさんの寸法が書かれていますから、そのすべてに寸法公差を記入するのは面倒です。
そこで、基準の公差を決めることで、寸法公差が書かれていない箇所は、一般公差に従って加工するというルールが決められています。
一般公差は、JIS(日本工業規格)で以下のように決まっています。
たとえば、寸法100mmで一般公差m級の場合、公差を指示していない箇所の寸法公差は100±0.3mmです。
ここで、「100±0.1mm」のように設計者が寸法公差を指示していれば、重要な部品だからもっと精度を高くしたいという設計者の意図がくみとれます。
また、どの公差等級を使うかは、会社によってルールが決められていることが多いです。
たとえば私の会社では、板金部品はc級、切削品はm級を使うといった感じで決められています。
いずれにしろ、JISでは寸法公差を記入していない箇所は一般公差にしたがって加工される。
これを覚えておいてください。
JIS(Japanese Industrial Standards)とは、工業製品の性能や安全性を定めた規格のことで、日本語では日本工業規格と言います。
たとえば、JISに基づいて製造されたネジは、呼び径ごとに同じ径・ピッチでつくられています。
これによって、製品やメーカーが異なっていても同じネジを使用することができ、ユーザーの利便性向上につながります。
ほかにも乾電池や鉛筆、トイレットペーパー、牛乳パックなど、JISに基づいてつくられた製品は、私たちの身の回りにたくさんあります。
気になる方はぜひ調べてみてください。
まとめ:寸法公差を使いこなせればトラブルが減らせる
以上、製図学習の第3ステップとして「寸法公差の書き方」を解説しました。
寸法公差を正しく使いこなせれば、部品の不具合がヘリ、製品のコストダウンにもつながります。
同じような形状の部品でも、細かい寸法や公差が違うだけで、加工や組み立てにかかる時間・コストは変わってきます。
寸法公差をきちんと理解して、ぜひ一人前の設計者を目指してください!
次の記事はこちら。
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