「ねじの強度ってどれくらい?」
「そもそもどうやって強度が決まっているの?」
「ねじの強度計算のやり方が知りたい」
このような疑問や悩みを解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は機械設計士として働いています。
本記事では、ねじの基礎知識を学ぶ第2ステップとして「ねじの強度と強度計算の考え方」をわかりやすく解説します。
この記事を読むとできるようになること。
- ねじの強度について理解できる
- 強度計算の考え方がわかる
- 適切なねじを使い分けられるようになる
用途に応じて適切なねじを選定できることは、機械設計で必須のスキル。
特に大きな力がかかる部位には、使用条件に応じてねじの強度計算が必要になります。
本記事を読めば、ねじの強度計算の考え方がわかり「壊れない設計」ができるようになるはず。
ぜひ参考にしてください。
ねじの強度とは
ねじの機械的性質は、材質ごとにJISで規定されています。
たとえば、上記はステンレス鋼製ボルト・小ねじの機械的性質を抜粋したもの。
強度区分に応じて、引張強さや耐力が異なるのがわかると思います。
ねじの頭には、「A2-70」のように鋼種区分と強度区分が書いてあるので、この数字からねじの機械的性質を調べることができます。
ここで、「引張強度」や「耐力」は、簡単に言うと材料に力が加わって破断する時の最大応力です。
したがって、実際の設計では、ねじにかかる力が引張強度や耐力を超えないように強度計算をする必要があります。
許容応力や安全率の考え方は、下記記事で詳しく解説しているので、合わせてチェックしてみてください。
ねじにかかる3つの力と強度計算の考え方
ねじを締め付けた時に発生する力は、下記の3つに分けられます。
- 軸力
- ねじりトルク
- せん断荷重
①軸力
軸力は、その名のとおりねじの軸方向に作用する力のことです。
ねじを締め付けていくと、ねじ頭が被締結部材に接触します。
ここからさらに締め込むと、ねじが引っ張られる方向に力が発生し、これが締め付け軸力Fとなるのです。
σ = F/A < σb
したがって、引張荷重によってねじが破断しないためには、締め付け軸力Fによって発生する引張応力σがねじの引張強度を超えないように設計する必要があります。
ただし、実際にはねじは強度区分で表される引張強度や耐力よりも小さい軸力で破断します。
これは、次に説明するねじりトルクが影響しているためです。
また、締め付け軸力Fは、締め付けトルクやねじの材質・表面粗さ(摩擦係数)によって変化します。
そのため、軸力は使用条件に応じて実験から求めるのが普通です。
②ねじりトルク
ねじりトルクは、ねじの回転方向に作用する力のことです。
ねじを締め付けていくと、締め付ける力の大きさによってねじりトルクTが発生します。
T = F × L
ねじや被締結部材の材質に対して、締め付けトルクが大きすぎると、ねじはねじり切られて破断してしまいます。
したがって、ねじは材質やサイズに応じた適切なトルク管理が大切です。
機械設計においては、トルク値が社内でルール化されている場合が多いので、そちらを確認しておくといいでしょう。
③せん断荷重
せん断荷重は、下図のように力の軸がずれて作用する荷重のことです。
ねじに発生するせん断荷重は、ねじ本体へのせん断荷重と、ねじ山に作用するせん断荷重の2種類があります。
τ = F/A <τa
たとえば、ねじ固定している部材が引っ張られると、ねじ本体にはせん断荷重が発生します。
ねじの有効断面積をA、部材にかかる荷重をFとすると、せん断応力τは上記のとおり。
これがねじのせん断許容応力τaを下回るように設計する必要があります。
また、ねじには先ほど言った軸力が発生するため、おねじとめねじが接触するねじ山部分にはせん断荷重が発生します。
ねじサイズが合っていない、おねじとめねじの強度区分が適切でない、締め付けすぎなどの場合はせん断荷重によってねじ山が破断してしまうので注意が必要です。
まとめ:適切な強度のねじを選定しよう
以上、ねじの強度と強度計算の考え方を解説しました。
今回紹介したのは、あくまでもねじの強度計算の基本となる考え方です。
実際の設計では、複数の力が組み合わさったり、力が繰り返しかかることでねじが破断してしまう場合もあります。
「壊れない設計」をするためには、使用条件に応じてねじにかかる力を見積もる能力が重要。
これを養うためにはある程度の経験も必要になります。
若手設計士の方は、今回紹介した内容を参考にしつつ、実際の仕事で経験しながら覚えていくのが近道です。
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