「”荷重”ってよく出てくるけど、ちゃんと理解できてない…。」
「荷重にはいろいろ種類があるの?」
「実際の設計にはどう関係してくる…?」
「ついでに計算方法も知っておきたい…!」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は機械設計士として働いています。
本記事では、材料力学を学ぶ第1ステップとして「荷重とは何か」を解説します。
この記事を読むとできるようになること。
- 荷重とは何かがわかる
- 荷重の種類がわかる
- 実際の設計にどう関係するかがわかる
- 荷重の計算方法がわかる
機械設計では、材料に作用する荷重と反力を求めることが重要。
荷重と反力の関係がわかれば、必要な強度、形状、寸法などがわかり、最適な材料を選定することができます。
「荷重ってなに?」「計算方法がわからない…!」という方は、ぜひ記事の内容を参考にしてください。
荷重とは?
荷重とは、物体に働く力のことです。
たとえば、地面に置かれた物体は、静止していても地面に対して力を加えています。
このとき、地面に作用する力が荷重です。
(物体の質量をm(kg)、重力加速度をg(m/s2)とすると、F=mg(N)の荷重が地面に作用している。)
ここで、荷重がかかっていても物体が静止しているのは、地面から荷重と同じ大きさの反力R(N)を受けているためです。
したがって、物体には荷重F=mgが働くと同時に、R=mg(=F)の反力が働いています。
力の平衡 R = mg = F (N)
一般に、静止している物体に力を作用させると、その力と同じ大きさで逆向きの力(反力)が発生します。
これを作用・反作用の法則(ニュートンの第三法則)と言い、材料力学における力の平衡を表す重要な法則です。
たとえば、橋の上を自動車が通過すると、自動車の重さが荷重として橋の支柱に作用します。
それと同時に、支柱には自動車を支えるための反力が発生し、これによって橋は壊れずに静止していられるのです。
荷重の位置や大きさは、時間によって変化する場合もあります。
さきほどの例で言うと、自動車は橋の上を動いているので、荷重の位置は時間とともに変化します。
荷重の位置が変化すると、それにともなって、支柱に発生する反力も変化して力の平衡を保つことができるのです。
このように機械設計では、材料に作用する荷重と反力の関係を求めることで、材料に要求される強度・形状・寸法・質量などを決定することができます。
荷重の種類
荷重とは何かがわかったところで、ここからは、荷重の種類を解説していきます。
全部で7つ。一度にすべて覚える必要はなく、設計をしながら、その都度ネットや本で調べればOKです。
引張荷重
引張荷重とは、下図のとおり物体を引っ張る向きに働く荷重のことです。
身近な例では、綱引きの綱、バンジージャンプの紐、ベルトコンベアのベルトなどにかかる力があります。
圧縮荷重
さきほどの引張荷重とは逆で、圧縮荷重は物体を圧縮する向きに働く荷重です。
たとえば、橋の支柱に加わる力は圧縮荷重になります。
せん断荷重
せん断荷重は、下図の向きに作用する荷重のことです。
引張荷重や圧縮荷重では、2つの力が同一直線上に作用していましたが、せん断荷重は力の軸がズレて作用します。
たとえば、地面に置かれた物体を図の方向に押す場合、地面との摩擦によって物体にはせん断荷重がかかります。
モーメント荷重
モーメント荷重とは、物体を曲げる向きに働く荷重です。
モーメント荷重は、力の大きさPが大きくなるほど、作用点からの距離Lが長くなるほど、大きくなります。
ねじり荷重
ねじり荷重とは、その名のとおり物体がねじれる向きに作用する荷重です。
たとえば、ネジを締め込んでいくと、ネジにはねじり荷重が発生します。
静荷重
静荷重とは、時間が経っても大きさや向きが変化しない(一定)の荷重のことです。
静止した物体に働く重力や反力は、静荷重と言えます。
動荷重
反対に、動荷重とは時間とともに大きさが変化する荷重のことです。
たとえば、バンジージャンプの紐に働く荷重は、バンジーを飛んだ人が下に行くにつれて大きくなるので、動荷重と言えます。
動荷重は、荷重の変化パターンによって以下の種類に分かれます。
- 衝撃荷重:瞬間的に発生する荷重
- 繰り返し荷重:荷重の大小の変化が繰り返される荷重
- 交番荷重:荷重の向きが交互に変化する荷重
- ランダム荷重:大きさがランダムに変化する荷重
実際の機械設計にどう関係する?
ここまで、荷重とは何か・どのような種類があるかを説明してきました。
では、機械設計において荷重はどのようなシチュエーションで使うのでしょうか。
最もよく出てくるのが、材料や製品の強度計算をする場面です。
機械設計では、何かを設計する際は必ず強度計算を行い、強度に問題がないかを確認します。
たとえば、椅子を設計する場合は「体重何kgの人が座っても壊れないか(座面や足が折れないか)」という確認をします。
材料によって強度は変わりますから、計算の結果、強度が不十分であることがわかれば、材料を変更したり、足の本数を増やしたりして対応することになります。
このように、機械設計では物体に働く荷重を求めることが重要です。
荷重と反力の関係がわかれば、適切な材料を選定し、最適な設計をするこができます。
まとめ:機械設計では荷重と反力の関係を知ることが重要
記事のポイントをまとめます。
- 荷重とは物体に働く力のこと
- 物体に荷重がかかると、同じ大きさで逆向きの反力が発生する(作用・反作用の法則)
- 荷重には、引張荷重・圧縮荷重・せん断荷重・モーメント荷重・ねじり荷重などの種類がある
- 時間が経っても大きさや向きが一定の荷重を静荷重という
- 時間とともに大きさや向きが変化する荷重を動荷重という
- 荷重と反力の関係を求めることで、適切な材料を選定することができる
以上です。
荷重は、材料力学を理解するうえで基本となる概念です。
「”荷重”ってよく聞くけど、ちゃんと理解できてなかった…。」という方は、ぜひ今回の記事を参考に勉強してみてください。
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