「アルミニウムってどんな種類があるの?」
「それぞれのアルミニウム合金の特徴を教えてほしい」
「実際の設計ではどうやって使い分ければいいの?」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は機械設計士として働いています。
本記事では、材料を学ぶ第4ステップとして「アルミニウム合金の種類と特徴」をわかりやすく解説します。
この記事を読むとできるようになること。
- アルミニウムの種類と特徴がわかる
- アルミニウム合金の使い分けができる
アルミニウムは、鉄鋼材料についでよく使われる材料です。
それぞれの特徴を理解して、適切な種類のアルミニウム合金を選定できるようにしておきましょう。
アルミニウム合金の特徴
アルミニウムには、鉄鋼材料にはない優れた特徴があります。
ここでは、鉄と比較したアルミニウム合金の特徴を8つ紹介します。
項目 | 単位 | アルミニウム (A5052) | 鉄 (SS400) |
---|---|---|---|
密度 | ×103 kg/m3 | 2.70 | 7.87 |
引張強さ | N/mm2 | 260 | 400 |
硬さ | HV | 60前後 | 120前後 |
縦弾性係数 | ×103 N/mm2 | 71 | 206 |
導電率 | ×106 S/m | 37.4 | 9.9 |
熱膨張率 | ×10-6 /℃ | 23.5 | 11.8 |
熱伝導率 | W/(m・k) | 237 | 80 |
融点 | ℃ | 600 | 1530 |
①軽さ
アルミニウムの最大の特徴が軽さです。
鉄と比較して密度が1/3なので、部品を軽くしたい場合はアルミを使います。
具体例を1つ挙げると、航空機や車はアルミを使うことで車体を軽量化し、燃費を向上させています。
②強さ
強さは鉄に比べるとやや劣りますが、弱いというほどではありません。
実際の設計では安全率を計算して、強度に問題がないかを判断します。
剛性(変形のしにくさ)の指標であるヤング率が鉄の約1/3なので、同じ大きさの力がかかるとアルミは鉄の3倍変形することになります。
③加工性と溶接性
鉄に比べてやわらかく、加工性が非常に良いのが特徴です。
また、熱伝導率が良く熱が逃げやすいため、加工熱によるひずみの発生も抑えられます。
ただし、熱が逃げるため溶接性は炭素鋼に比べて劣ります。
④耐食性
アルミニウムは耐食性の高い材料です。
これはアルミニウムが空気中の酸素と結びつくことで表面に酸化皮膜を形成し、サビや腐食を防いでくれるためです。
⑤導電率
銀、銅、金についで導電率が高いのが特徴です。
銀や金よりもコストが低いので、電線にはアルミが用いられています。
⑥熱伝導率と熱膨張率
さきほど言ったように熱をよく伝える(熱伝導率が高い)ので、部品に熱を伝えたい時や、熱を逃したい(放熱したい)箇所に用いられます。
ただし、鉄に比べて熱膨張率が高いため、寸法精度が求められる場合は熱膨張や熱ひずみの影響を考慮した設計が必要です。
⑦耐熱
アルミニウムの耐熱は約660℃ですが、200℃を超えると強度が低下します。
したがって、設計時は最高使用温度を200℃を目安として検討します。
⑧磁性
アルミニウムは磁性を持たないので、磁石にはくっつきません。
アルミニウム合金の種類
つづいて、アルミニウム合金の種類を紹介します。
アルミニウムのJIS記号は、大文字のAの後に合金元素を表す4ケタの数字をつけて表されます。
機械設計においては、どの数字がどの合金元素を表すかまでは覚えなくてOK。
それぞれの特徴だけ理解しておきましょう。
分類 | 種類 | 耐力 [N/mm2] | 引張強さ [N/mm2] | 硬度 [HBW] |
---|---|---|---|---|
1000系 | A1100 | 35 | 90 | 23 |
2000系 | A2017 ジュラルミン | 275 | 425 | 105 |
2000系 | A2024 超ジュラルミン | 325 | 470 | 120 |
5000系 | A5052 | 215 | 260 | 68 |
6000系 | A6063 | 145 | 180 | 60 |
7000系 | A7075 超々ジュラルミン | 505 | 570 | 150 |
鋳造品 | AC2A | – | 180以上 | 75 |
ダイカスト鋳物 | ADC12 | 150 | 310 | 86 |
1000系(純アルミニウム)
1000系アルミニウムは、純度が高く、耐食性、導電性、熱伝導性が良いのが特徴。
ただし、強度が低いため構造部品として使うことは少なく、キレイな見ばえを活かして製品のカバーなどに使われます。
2000系(Al-Cu-Mg系)
2000系は、強度が高く加工性が良いですが、溶接性、耐食性は劣ります。
A2017はジュラルミン、A2024は超ジュラルミンと呼ばれ、強度が非常に高いのが特徴です。
軽くて強度が求められる航空機や航空宇宙機器などの部品として用いられています。
3000系(Al-Mn系)
3000系は、純アルミニウムと同等の耐食性を持ち、マンガンMnによって強度を向上させた材料です。
身近な例だと、アルミ缶に使われています。
4000系(Al-Si系)
4000系は、シリコンSiを加えることで、耐熱性、耐摩耗性を向上させた材料です。
ピストンやシリンダーヘッドなどに使われています。
5000系(Al-Mg系)
5000系アルミニウムは、強度が高く、加工性、溶接性、耐食性に優れた万能な材料です。
A5052はアルミニウム合金の中で最もよく使われています。
6000系(Al-Mg-Si系】
こちらも加工性、溶接性、耐食性に優れた材料です。
A6063は板材、棒材、Lアングルなどバリエーションも豊富で、A5052についで多く使われます。
7000系(Al-Zn-Mg系)
代表品種のA7075は超々ジュラルミンと呼ばれ、アルミニウム合金の中で最も高い強度を持ちます。
価格は高いですが、航空機やスポーツ用具など強度と軽量化、高精度が必要な部品に用いられます。
アルミニウム鋳物
アルミ鋳物は、鋳造品(砂型鋳造・金型鋳造とダイカスト鋳物に大きく分かれます。
ダイカストとは、溶かした非鉄金属(この場合はアルミ)を高速・高圧で金型へ流し込んでつくる製造方法です。
鋳造品に比べて寸法精度が良く、大量生産にも向いていますが、設備や金型にかかるコストが高いため初期費用が上がるというデメリットがあります。
下記記事で詳細が解説されているので、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
砥石と研削研磨の情報サイト
機械設計ではアルミニウムをどう使い分ける?
さきほど言ったように、一般的には5000番台のA5052が最も多く使われます。
強度、加工性、溶接性、耐食性に優れているので、特に理由がなければA5052を選定しておけば間違いありません。
板材はA5052、丸棒はA5056が多く流通しているので、小さな部品の場合は「A5052/A5056」と指示すれば加工メーカーが任意の材料を選択できて加工コストを下げられます。
また、より特別な性能が必要な場合には、それ以外のアルミニウム合金を選定しましょう。
たとえば、強度や軽量化が必要な場合にはジュラルミンを選ぶといった感じ。
用途や目的、コストに応じて最適な材料を選定できるのが、一流の機械設計エンジニアと言えます。
まとめ:アルミニウムの種類と特徴を理解して正しく使い分けよう
以上、アルミニウムの種類と特徴をまとめました。
たくさんあるので、一度読んだだけでは理解できないと思います。
実際に仕事で材料選定をする際にもう一度この記事を読んでみると、理解がより深まるはず。
最終的には、「こういう用途だからこの材料」というふうに頭の中で考えて材料選定できるようになれば完璧です。
ぜひ本記事を参考に、アルミニウムを正しく使い分けられるようになってください!
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