「プラスチックってどんな種類があるの?」
「プラスチックと樹脂の違いは?」
「種類がたくさんあって、設計でどれを選べばいいかわからない…」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は機械設計士として働いています。
本記事では、材料を学ぶ第6ステップとして「プラスチック材料の種類と特徴」をわかりやすく解説します。
この記事を読むとできるようになること。
- プラスチック材料の種類と特徴がわかる
- プラスチックと樹脂の違いがわかる
- 用途に応じた使い分けがわかる
プラスチック材料は、軽い・成形しやすいなどの特徴を活かして、身の回りのあらゆる製品に使われています。
機械設計においても、鉄鋼材料やアルミニウム合金と同様に使用頻度が高い材料です。
本記事を読めばプラスチックの特性がわかり、目的に応じて適切な種類を選定できるようになるはず。
ぜひ参考にしてください。
プラスチック(樹脂)の分類
はじめに、プラスチックの分類について説明します。
機械設計では、プラスチック材料のことをよく「樹脂」と言いますが、厳密には樹脂の中でも合成樹脂のことをプラスチックと言います。
図で表すと以下のようなイメージ。
樹脂はまず、天然樹脂と合成樹脂に分かれます。
前者は松脂(まつやに)や漆(うるし)、天然ゴムといった自然由来の樹脂、後者は石油、石炭、天然ガスなどから人工的に作られた樹脂のことです。
プラスチックの主な原料は石油なので、合成樹脂に分類されます。
合成樹脂は熱に対する性質によって「熱可塑性(かそせい)樹脂」と「熱硬化性樹脂」に分けることができます。
前者は加熱すると軟化する(やわらかくなる)性質、後者は加熱すると硬化する(硬くなる)性質のことです。
熱可塑性樹脂は、再加熱すると再度軟化するため再利用しやすく、生産量のおよそ90%を占めます。
さらに、熱可塑性樹脂は、その特性によって「汎用プラスチック」と「エンジニアリングプラスチック(略してエンプラと呼ぶ)」に分類されます。
前者は安価で大量生産に向いており日用品から機械部品まで幅広く使われるプラスチック、後者は強度や耐熱性を高めたプラスチックのことです。
私の職場ではエンプラを使うことが多いですが、どの材料が適切かは設計する製品や用途によって異なるので、種類ごとの特徴を理解しておくことが大切です。
プラスチック材料の特徴
つづいて、プラスチックの主な特徴を5つ紹介します。
プラスチックは、下記の性質を活かすことで日用品から機械部品まで様々な用途に使われています。
①軽い
プラスチック材料は、その軽さが最大の特徴。
たとえば、自動車は一部の部品に樹脂を採用することで、車体を軽量化し燃費を向上させています。
他にも、製品を軽量化したい場合には、樹脂を選定することが多いです。
②強度が低い
重量が軽い分、金属材料に比べると強度は劣ります。
具体的には、強さと硬さが低いので、大きな力がかかると破損したり、表面に傷がつきやすいということです。
したがって、力がかかる箇所に使用する場合は、きちんと強度計算をして採用可否を判断する必要があります。
③成形加工がしやすく製造コストが安い
プラスチックは低い温度でやわらかくなるため、成形加工に向いています。
成形加工は大量生産に向いているので、製造コストを抑えられるのがメリットです。
型を使って金属や樹脂を加工する方法。
材料を溶かして型に流し込む方法や、材料自体を型で押しつぶして成形する加工方法がある。
④熱伝導率が低い
熱を伝えにくいのも、プラスチックの代表的な特徴の1つ。
たとえば、一方の部品を加熱していて、それに取り付ける部品には熱を伝えたくない(断熱したい)といった場合には、取り付け部品に樹脂を選定します。
⑤絶縁性がある
同様に、電気を伝えにくいのもプラスチックの特徴です。
電子部品の基板では、絶縁材料としてエポキシ樹脂がよく使われます。
⑥透明性がある
アクリルやポリカーボネート、PETなどの樹脂は、透明性があるため透明ケースやカバー、窓などに使われています。
ちなみに、PETは「ポリエチレンテレフタレート」の略で、ペットボトルに使われているプラスチック材料です。
プラスチックの種類
さいごに、プラスチック材料の種類について説明します。
ここでは、プラスチックの中でも代表的な3つを紹介します。
汎用プラスチックの代表例
汎用プラスチックにはたくさんの種類がありますが、生産量トップ3のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(塩ビ)が全体の70%を占めます。
生産設備でよく使われるのはアクリル樹脂とポリ塩化ビニルの2つです。
アクリル樹脂
アクリル樹脂(通称アクリル)は、透明性を活かして機械のカバーやケースに使われています。
着色もできるので、用途によって使い分けることも可能。
装着する機械の色に合わせたり、半透明にして中を見にくくすることもできます。
ただし、耐熱温度が低い(70〜90℃)ので、使用する場合は周囲温度に注意が必要です。
ポリ塩化ビニル
ポリ塩化ビニル(通称塩ビ)も、アクリル同様にカバーとしてよく使われるプラスチック。
アクリルと比較して安価で衝撃に強く、粘り強さもあるのでひび割れしにくいのが特徴です。
耐熱温度は60〜80℃となります。
エンジニアリングプラスチックの代表例
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)は、汎用プラスチックと違って強度や耐熱性が必要な箇所に使われます。
数値で言うと、「引張強さ49N/mm2以上、耐熱温度100℃以上」が目安です。
ポリカーボネート
エンプラの中でもよく使われるのがポリカーボネート(通称ポリカ)です。
透明性があり、アクリルより強度が高いため、自動車のヘッドライトやサングラスのレンズなどに使われています。
線膨張係数が高く熱の影響を受けやすいので、温度変化を伴う箇所に使用する場合は注意が必要です。
まとめ:プラスチック材料の種類と特徴を理解して正しく使い分けよう
以上、プラスチック材料の種類と特徴をまとめました。
たくさんあるので、一度読んだだけでは理解できないと思います。
実際に仕事で材料選定をする際にもう一度この記事を読んでみると、理解がより深まるはず。
最終的には、「こういう用途だからこの材料」というふうに頭の中で考えて材料選定できるようになれば完璧です。
ぜひ本記事を参考に、プラスチックを正しく使い分けられるようになってください!
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