「板金加工とはどんな加工方法か教えてほしい」
「そもそも何のために板金加工をするのかよくわかっていない…」
「板金加工の注意点や図面指示のコツがあれば知りたい」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は機械設計士として働いています。
本記事では、機械加工を学ぶ第5ステップとして「板金加工の種類と特徴」をわかりやすく解説します。
この記事を読むとできるようになること。
- 板金加工の種類と特徴がわかる
- 板金加工を使った設計の注意点がわかる
- 板金加工の図面の書き方がわかる
板金加工は、文字通り「板金」を加工する方法です。
用途や形状によっていくつか種類があり、それぞれ注意点もあります。
今回は、そんな板金加工の種類と特徴、図面の書き方をわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
板金加工とは
はじめに、「板金」とは文字通り金属の薄い板のこと。
そして、この板金を曲げたり切断したりする加工が板金加工です。
自動車のボディ、スマートフォンやパソコンの外装など、身の回りのさまざまな製品に使われています。
板金加工の種類
板金加工は、用途や形状によって加工方法が異なります。
代表的なのは、以下の4つです。
- せん断加工
- 曲げ加工
- 深絞り加工
- バーリング加工
①せん断加工
板金を2枚の刃ではさみ込んで切断する加工方法です。
より複雑な形状は金型で打ち抜いて切断するため、特に「打抜き加工」と言います。
②曲げ加工
文字通り、板金を曲げる加工方法です。
曲げ形状は、単純なL字曲げのほかに、U形やZ形などもできます。
③深絞り加工
平面形状の板金を、コップのような容器形状(凹型)に変形させる加工方法です。
アルミ缶や灰皿、ボトル容器などに使われています。
④バーリング加工
板金にねじ加工をする場合に使います。
板金は板厚が薄いため、普通にねじ加工を行うと必要なねじ長さが確保できません。
そこで、下穴にパンチを打ち込むことで穴の円周部を伸ばし、ねじ長さに必要な板厚を確保します。
ちなみに、板金にねじ加工をする方法としては、板金にナットを溶接する「溶接ナット」もあります。
板金加工の注意点と図面の書き方
つづいて、機械設計で板金加工を利用する際の注意点を紹介します。
図面の正しい書き方も紹介するので、設計者はきちんと理解しておきましょう。
①板金の最小曲げ半径を考慮する
曲げ加工を行うと、角部は完全な直角ではなく少し丸みがつきます。
この半径Rを「曲げ半径」といい、最小でも板厚と同じくらいのRがつきます。
最小曲げ半径≒ 板厚
図面では、たとえば板厚が2mmの場合は「R2以下」と「以下」をつけておくことで、加工の許容範囲が広がります。
あるいは、「曲げ半径は最小とすること」などと記載しておくと、最小曲げ半径になるように加工してくれます。
②曲げによる板金の膨らみを考慮する
曲げ加工を行うと、板の内側は圧縮されて縮み、外側は引っ張られて伸びます。
内側の圧縮分は側面方向に膨らむため、曲げ加工をした板金部品を2つ以上並べる場合は、この膨らみを考慮してすき間を空ける必要があります。
膨らみ量は材質や曲げ半径によって異なりますが、1つは板厚の15%が目安です。
③曲げ加工の加工限界を考慮する
L曲げ、Z曲げには、加工限界が存在します。
下図に示す曲げ高さが小さすぎると、加工で使う金型が入らないため加工できないのです。
また、曲げの直後に穴あけ加工を行う場合も要注意。
穴の位置が角部に近すぎると、曲げの影響で穴が変形してしまう可能性があります。
板厚と曲げ高さ、および穴径と穴位置の関係は社内でルール化されている場合が多いので、事前に確認しておきましょう。
④必要に応じて曲げ逃げを追加する
曲げ加工において、辺の一部分だけを曲げる場合は逃げ加工が必要になります。
曲げ逃げがないと、曲げ部の両端がちぎれながら曲がる無理曲げとなってしまい、クラックの原因になります。
⑤板金加工の公差を把握する
一般的に、板金の外形寸法は切削部品よりも寸法公差が大きくなります。
そこで、公差を緩めに指定すれば、加工者は公差を気にせず加工することができます。
板金は製品のカバーや部品の取り付け板など、外形の寸法精度が必要ない用途で使われることが多いです。
したがって、特に使用上の問題がなければ公差は緩めに指定しましょう。
⑥バーリング加工の図面指示
バーリング加工を使いたい場合は、「ねじ寸法」と「バーリング加工の向き」の2つの情報を図面に記載します。
また、バーリング部の厚みの指示不要です。
以下にバーリング加工の図面指示の一例を載せておきます。
まとめ:板金加工を理解して使いこなそう
以上、板金加工の種類と特徴、図面の書き方を紹介しました。
板金加工は、機械加工の中でも比較的安価でよく使われる加工方法です。
一方で、板金加工の知識がないと、せっかく設計しても「加工できない」「寸法精度が保証できない」といった不具合が起こる可能性もあります。
機械設計初心者の方は、ぜひ今回紹介した内容を理解して、板金加工を使いこなせるようになってください。
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