「熱機関について知りたい…!」
「カルノーサイクルってなんだっけ?」
「熱サイクルにはどんな種類があるの?」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は機械設計士として働いています。
本記事では、熱力学を学ぶ第6ステップとして、「熱サイクルの種類と代表例」を紹介します。
この記事を読むとできるようになること。
- 熱機関とは何かがわかる
- 熱サイクルの種類がわかる
- 熱サイクルの代表例がわかる
オットーサイクルやディーゼルサイクルなど、熱機関にはさまざまな種類があります。
「このサイクルはこれに使われている」といった形で、身近な例と一緒に説明していきますので、「授業で理解できなかった…」という人でもわかりやすいはず。
この記事を読めば、機械設計の経験がない方でも、熱機関の仕組みがわかりますよ。
前回の記事はこちら。
熱機関とは
熱機関とは、熱エネルギーを力学的エネルギー変換して作動する機械装置のことです。
熱エネルギー源として、化学反応で熱が発生する物質が必要であり、自動車エンジンにおけるガソリンや軽油、蒸気機関における石炭などがあります。
たとえば、自動車のエンジンは、ガソリンと空気を燃焼させて熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する内燃機関です。
ガソリンを空気中の酸素と反応させることで、高温の二酸化炭素と水が生成され、これが燃焼ガスとしてエンジン内のピストンを動かします。
また、蒸気機関は、石炭の燃焼によって水を水蒸気に変え、機械的エネルギーを生み出す外燃機関です。
石炭は空気中の酸素と反応して発熱するので、その熱を利用して水を水蒸気に変えてピストンを動かします。
作動物質そのものを燃焼させて動力を得る熱機関を内燃機関と言う。
自動車のエンジンは、ガソリンと空気を燃焼させることで発生する燃焼ガスを作動物質として利用するので内燃機関。
それに対して、外部で得られた熱で作動物質を加熱し、動力を得る熱機関を外燃機関と言う。
蒸気機関は、石炭と空気の反応によって得られる熱で水を加熱し、発生した水蒸気を作動物質として利用するので外燃機関。
代表的な熱サイクル
さきほど紹介したガソリンエンジンや蒸気機関以外にも、熱機関(熱サイクル)にはさまざまな種類があります。
ここでは、熱サイクルの種類を、代表例とともに紹介していきます。
カルノーサイクル
カルノーサイクルは、すべての熱機関の基本です。
熱効率が最も良くなるよう考案された熱サイクルで、現実的には作れない理論上の熱機関となります。
具体的な行程は以下のとおり。
2つの断熱変化と、2つの等温変化で構成されます。
理論上、最も熱効率がいい熱サイクルであり、あらゆる熱機関でカルノーサイクルの考え方が使われています。
オットーサイクル
オットーサイクルは、ガソリンエンジンの原型となっている熱サイクルです。
下図のように、2つの断熱変化と、2つの等容変化を組み合わせて構成されています。
オットーサイクルの熱効率を良くするためには、④→①で排出される放熱量Q2を小さくする必要があります。
ディーゼルサイクル
ディーゼルサイクルは、名前のとおりディーゼルエンジンに使われている熱サイクルです。
等圧加熱が特徴で、ガソリンエンジンよりも高圧力で燃焼させることで、熱効率を高めています。
ディーゼルエンジンとは
ガソリンではなく、軽油を燃料とするエンジンのこと。
ガソリンは常温・常圧で燃えやすい燃料だが、軽油は高温・高圧の環境で燃焼する。
ディーゼル車は、ガソリン車よりも燃料代が安い・燃費が良いなどのメリットがあるが、価格が高い・メンテナンス費用が高いなどのデメリットもある。
ブレイトンサイクル
ブレイトンサイクルは、ガスタービンに用いられている熱サイクルです。
高速で気体を通過させることでタービン(羽根車)を回し、動力を得ます。
航空機で用いられているジェットエンジンなどが、ブレイトンサイクルの代表例です。
スターリングサイクル
スターリングサイクルは、スターリングエンジンという外燃機関に用いられている熱サイクルです。
外部から、エンジン内部の気体に温度差を与え、収縮・膨張させることで動作します。
外燃機関なので、石油、バイオマス燃料、地熱、太陽光など、さまざまな燃料を使えるのが特徴。
環境にやさしいエンジンと言われています。
ランキンサイクル
ランキンサイクルは、蒸気機関に用いられている熱サイクルです。
外部から得た熱で水を加熱し、発生した水蒸気でタービンを回して発電します。
主な用途は、火力発電、原子力発電、バイオマス発電など。
まとめ:世の中にはさまざまな熱機関がある
以上、熱サイクルの種類と、代表的な熱機関を紹介しました。
熱機関とは、熱エネルギーを力学的エネルギーに変換して作動する装置のことです。
世の中にある機械の多くは、熱サイクルを使って動力を得ています。
熱サイクルを理解することで、機械設計としての知識も深まるはず。
もちろん、すべて覚える必要はありませんので、自分の仕事に関係がありそうなものから勉強していってみてください。
次の記事はこちら。
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