「半導体プロセスについて勉強したい」
「洗浄装置について教えてほしい」
このような疑問にお答えします。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、半導体製造装置を学ぶ第1ステップとして「洗浄装置の特徴」をわかりやすく解説します。
この記事を読むとわかること。
- 洗浄装置の役割・構成・種類がわかる
- 洗浄装置のシェアが高いメーカーがわかる
洗浄・乾燥は、各プロセスの前後で必ず行う工程です。
前工程では最も使用頻度が高い装置なので、半導体プロセスを勉強するうえでは、理解しておくことが必須。
今回は、そんな洗浄装置の特徴を初心者にもわかりやすく解説します。
洗浄装置とは
洗浄装置の役割は、ずばりウェーハの汚れを取り除くこと。
この汚れは、目に見えない小さなゴミ(パーティクルと呼ぶ)や人の垢・フケに含まれる有機物、汗などの油脂、工場内で使っている金属による汚染です。
洗浄装置では、これらの汚れを薬液や純水(不純物をほとんど含まない水のこと)を使って洗い流します。
また、洗浄後はウェーハに水滴が残らないよう乾燥が必要。
というのも、水滴が残っていると、シリコンが空気と反応して酸化するウォータマークが発生してしまうからです。
したがって、洗浄後は必ずウェーハを乾燥させて装置から出します(これをドライイン・ドライアウトの原則と呼ぶ)。
洗浄装置の構成
洗浄装置の基本的な構成は以下のとおり。
1種類の薬液で洗浄できる汚染は1つなので、複数の汚染を洗浄する場合は、その分薬液槽と純水槽が増えます。
- 搬送系・・・ウェーハを搬入・搬出する
- 薬液槽・・・薬液でウェーハを洗浄する
- 純水槽・・・ウェーハについた薬液を洗い流す
- 乾燥ステージ・・・ウェーハを乾燥させる
洗浄装置の種類
洗浄だけに限らず、半導体製造装置は複数のウェーハをまとめて処理するバッチ式とウェーハを1枚ずつ処理する枚葉式にわかれます。
バッチ式洗浄装置
バッチ式洗浄装置は、さきほど言ったように複数のウェーハをまとめて洗浄します。
「キャリア」と呼ばれる専用のケースにウェーハを入れ、キャリアごと薬液槽に入れて洗浄します(ディップ式)。
一度にたくさんのウェーハを洗浄できるので、スループットが上がりチップのコストダウンにつながるのがメリット。
ただし、枚葉式と比べて装置が大型になる・薬液や純水の使用量が多いといったデメリットもあります。
1時間に何枚のウェーハを処理できるかを表した数値。
たとえば、1日で2400枚のウェーハを洗浄できる場合、スループットは100[枚/h]。
枚葉式洗浄装置
枚葉式は、バッチ式とは違いウェーハを1枚ずつ洗浄していく方法です。
洗浄方法も、ウェーハを薬液槽につけるディップ式ではなく、ノズルを使って薬液や純水を吹き付けるスプレー式になります。
枚葉式のメリットは、省スペース化が可能・汚染やパーティクルが次のウェーハに転写しないなどです。
また、デメリットとしては薬液の回収や濃度コントロールが難しいことが挙げられます。
乾燥装置
乾燥装置もいくつか種類がありますが、代表的なのは以下の2つです。
- スピン乾燥方式・・・ウェーハを高速回転させて水分を吹き飛ばす方法
- IPA乾燥方式・・・ウェーハ表面の水分をIPA(イソプロピルアルコール)で置換して乾燥させる方法
スピン乾燥方式は、構造が簡単で乾燥スピードも速いのがメリットですが、回転によって静電気が発生してしまいパーティクルを引きつけてしまうのがデメリットです。
また、IPA乾燥方式は、静電気は発生しませんが、IPAという引火性の有機溶剤を使用する点が課題となっています。
洗浄装置のシェアが高いメーカー
さいごに、洗浄装置をつくっているメーカーにはどんな会社があるかを紹介して記事を終わりたいと思います。
SCREENホールディングス
SCREENホールディングスは、半導体の洗浄装置でシェアトップを獲得している会社。
枚葉式、バッチ式どちらもシェアが高く、特にバッチ式ではシェア70%以上と過半数を占めています。
本社は京都です。
東京エレクトロン
東京エレクトロンは、洗浄装置でSCREENに次ぐシェアに2位を獲得している会社。
洗浄以外に、コータ・デベロッパーやエッチング装置などでもシェアが高いのが特徴です。
本社は東京にあります。
まとめ:洗浄装置の役割はウェーハをきれいにすること!
以上、洗浄装置の種類と特徴を紹介しました。
半導体を知らない方にもわかるよう専門用語にも解説を入れたつもりですが、詳しくない方は1回読んだだけだと完璧には理解できないと思います。
製造装置メーカーで働く方でなければザッと理解するだけでもOK。
これから製造装置メーカーで働いてみたいと考えている方は、繰り返し記事を読んだり、自分で調べたりして理解できるようにしてみてください!
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