「伝熱の種類が知りたい」
「熱伝導率と熱伝達率って何が違うんだっけ?」
「移動する熱量や温度差を求めたい」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は機械設計士として働いています。
本記事では、熱力学を学ぶ第8ステップとして、「3種類の伝熱」について解説します。
この記事を読むとできるようになること。
- 熱が伝わる仕組みがわかる
- 熱の移動量が計算できる
- 熱伝導率と熱伝達率の違いがわかる
熱の移動方法には、熱伝導・熱伝達・熱放射の3つがあります。
それぞれの違いや計算方法をわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
前回の記事はこちら。
伝熱の種類は3つ
はじめに、熱は物質ではなくエネルギーです。
そのため、物体から物体へ移動するという性質があります。
この、熱エネルギーが物体から物体へ移動する現象が伝熱です。
ちなみに、ここで言う「物体」は、気体・液体・固体を問いません。
水が高いところから低いところへ流れるように、熱も高温の物体から低温の物体へ移動します。
内部に温度差がある固体では、高温域から低温域へ熱が移動します。
このような、1つの固体内における熱の移動が熱伝導です。
高温の流体(気体・液体)が、低温の固体表面を流れていると、流体から固体表面へ熱が急速に移動します。
反対に、高温の固体表面から、低温の流体への熱移動も同様です。
このように、流体と固体表面間の熱移動を熱伝達と言います。
高温の物体と低温の物体が離れていても、熱は移動できます。
たとえば、太陽からの熱は、直接太陽に触れていなくても感じられます。
宇宙には空気がありませんから、熱を伝える物体がなくても熱は移動できるということです。
このように、離れた物体同士の熱の移動を熱放射(熱輻射)と言います。
以上をまとめると、伝熱の種類は以下のとおりです。
- 固体内の熱の移動 →熱伝導
- 固体表面と流体(液体・気体)間の熱の移動 →熱伝達
- 離れた物体間の熱の移動 →熱放射
熱伝導とは
熱伝導では、熱の移動速度は温度差に比例して、移動距離に反比例します(フーリエの法則)。
これを式で表すと、以下のとおり。
ここで、kは熱伝導率[W/(m・K)]といい、熱の伝わりやすさを表します。
熱伝導率は、材料ごとに値が決まっており、熱伝導率が大きいほど熱が伝わりやすいです。
以下に、代表的な材料の熱伝導率を示します。
材質 | 熱伝導率[W/(m・K)] |
---|---|
銀 | 409 |
銅 | 394 |
金 | 310 |
アルミニウム | 229 |
マグネシウム | 143 |
鉄 | 83 |
大理石 | 2.8 |
ガラス | 0.9 |
実際の設計では、「熱伝導をよくしたいけど、重量は軽くしたいからアルミを選定する」といった感じで、熱伝導率や重量、強度など、さまざまな要因を考慮して材料を選定します。
熱伝達とは
熱伝達における熱の移動量は、熱伝達率h[W/(m2・K)]によって決まります。
ここで、熱伝達率は、熱伝導率のように材料固有の値ではなく、流れの状態や壁面の表面粗さによって決まる係数です。
たとえば、流速が増加すると、熱伝達率は大きくなるため熱の移動量も増加します。
扇風機の風速を強くするとより涼しく感じるのは、流速が増加して熱の移動量が大きくなるためです。
熱放射(熱輻射)とは
熱伝導や熱伝達とちがい、熱放射では離れた物体間で熱移動が行われ、その中間に媒体は必要ありません。
これは、電磁波を介して熱が移動しているためです。
電磁波は「波」なので、真空中でも伝わります。
放射線、光、電波、電磁界の総称。
波長ごとに性質が異なり、X線や紫外線、赤外線などの種類がある。
固体の物体は、あらゆる波長の電磁波を放射・吸収することができます。
高温物体から放射された電磁波は、低温物体側で吸収されてエネルギーとなり、物体の温度を上昇させるのです。
たとえば、電子レンジはマイクロ波を放射して、食品に含まれる水分子を振動させることで加熱します。
他にも、ストーブやこたつ、遠赤外線ヒーターなど、熱放射を利用した製品は身の回りにたくさんあります。
興味がある方は、詳しく調べてみると面白いでしょう。
まとめ:熱が伝わる方法は熱伝導・熱伝達・熱放射の3種類
記事のポイントをまとめます。
- 熱は高温の物体から低温の物体へ移動する
- 固体内の熱の移動が熱伝導
- 固体表面と流体(液体・気体)間の熱の移動が熱伝達
- 離れた物体間の熱の移動が熱放射
以上です。
熱の伝わり方は、熱伝導・熱伝達・熱放射の3種類。
実際には、上記3つの組み合わせによって熱が伝わる場合が多く、複合熱伝達によって熱の移動が行われています。
次の記事はこちら。
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