「熱力学第一法則ってなんだっけ?」
「どういう時に使えるの?」
「身近な例だと何がある?」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、熱力学を学ぶ第4ステップとして、「熱力学第一法則」について解説します。
この記事を読むとできるようになること。
- 熱力学第一法則とはどんな法則か理解できる
- 熱力学第一法則を使った身近な例がわかる
- 熱力学第一法則を使いこなせるようになる
熱力学第一法則とは、ずばりエネルギー保存則のことです。
本記事では、ややこしい式や単語はひとまず置いておいて、熱力学第一法則の意味と身近な例を説明します。
前回説明した状態方程式とも関係する内容なので、まだ読んでいないという方は、先にそちらを勉強することをおすすめします。
それではまいりましょう。
前回の記事はこちら。
熱力学第一法則とは
冒頭でも言ったように、熱力学第一法則とは、エネルギー保存則のことです。
気体の状態が変化するとき、変化前と後でエネルギーの総和は保存されます。
式で書くと、以下のとおり。
⊿Q = ⊿U + ⊿W [J]
ただし、⊿Q:外部から加えた熱エネルギー、⊿U:気体の内部エネルギーの増加、⊿W:気体が外部にした仕事です。
式だけだとわかりづらいと思うので、次の章では、熱力学第一法則があらわす意味を身近な例と一緒に説明していきます。
熱力学第一法則が意味すること
熱力学第一法則が意味するのは、「熱は力(仕事)に変換できる」ということです。
具体例で説明すると、たとえば自動車のエンジンは、ガソリンの燃焼によって発生した「熱エネルギー」を、ピストンを動かす「力」に変換してクルマを動かしています。
図で描くと以下のようなイメージ。
熱力学第一法則よりエネルギーの総和は保存されるので、以下の式が成り立ちます。
⊿Q = ⊿U + ⊿W [J]
(熱エネルギー)=(内部エネルギーの増加)+(クルマを動かす仕事)
ただし、実際には排気ガスとして捨てられる熱・圧力損失、部品の摩擦による摩擦損失、エンジンを冷却するための冷却損失などがあるので、熱エネルギーがすべて仕事に変換されるわけではありません。
加えた熱に対して、どれだけの仕事をしたかを表す割合を「熱効率」と言います。
熱効率が高いほど、燃費がいいクルマというわけです。
ちなみに、エンジンの熱効率はおおよそ15〜30%。
半分以上はムダな熱として捨てられているので、意外と熱効率は悪いですよね。
熱効率をいかに高くした熱機関を発明するかが熱力学の課題であり、次の記事で説明する「熱サイクル」に関係していく話になります。
おまけ
エンジンの熱効率について、ちょっと面白い記事があったので紹介します。
日産のエンジンについての記事です。
さきほど、自動車エンジンの熱効率は15〜30%くらいと言いましたが、日産は熱効率50%を実現したとのこと。
興味がある方は、下記を読んでみてください。
まとめ:熱力学第一法則は熱を力に変換する
記事のポイントをまとめます。
- 熱力学第一法則とは、エネルギー保存則のこと
- 熱は力(仕事)に変換できる
- 実際の製品では、熱や摩擦による損失がある
- 加えた熱に対して、どれだけの仕事をしたかを表す割合を熱効率と言う
- いかに熱効率の高い熱機関を発明するかが、熱力学の課題
以上です。
今回は、身近な例として自動車のエンジンを挙げて、熱力学第一法則の意味について説明しました。
エンジン以外にも、熱力学第一法則を利用した製品は、世の中にたくさんあります。
機械設計をやっていくうえでも重要な法則ですので、ぜひ理解して使えるようになりましょう。
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