「半導体業界への転職を考えているけど、どういう仕事をするかよくわかっていない…」
「具体的な仕事内容や年収、残業時間が知りたい」
「将来性は大丈夫…?」
「未経験でも採用される?」
このような疑問にお答えします。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
今回は、「半導体業界の転職」に関する疑問・悩みにお答えします。
「半導体」は聞いたことあるけど、どういう企業があってどういう仕事をするのかよくわからないという方は多いと思います。
本記事では、実際に半導体製造装置メーカーで機械設計士として働いている僕が、皆さんの疑問にお答えします。
具体的な仕事内容から、年収、残業時間、勤務地など、本音でお伝えするので参考になるはず。
半導体業界への転職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
※マイナビのプロモーションを含みます。
半導体業界とは
はじめに、半導体とは、簡単に言うとパソコンのメモリやCPU、カメラについているセンサーのことです。
身の回りの様々な電子機器、家電製品に使われています。
半導体業界とは、文字通りこの「半導体」をつくる企業のこと。
半導体を設計・生産する半導体メーカーだけでなく、自動車や電子機器メーカーに半導体を卸す半導体商社、シリコンウェーハやフッ化水素など半導体の製造に欠かせない材料をつくる材料メーカー、半導体を生産するための機械・設備をつくる製造装置メーカー、製造装置に使われるポンプやヒーターをつくる各種機器メーカーなどがあります。
上図は、各企業の関係と代表的なメーカーを表したもの。
半導体メーカーは海外の企業が多いので、海外で働きたい、あるいは外資系の日本法人で働きたいという方におすすめできます。
ちなみに、製造装置メーカーや材料メーカーは国内企業が多いのも、業界の特徴です。
半導体業界の仕事内容
半導体業界の仕事内容は、多岐にわたります。
一例をあげると、僕が働く製造装置メーカーの職種は以下のとおり。
- メカ設計
- エレキ設計
- ソフト設計
- プロセス開発
- フィールドエンジニア
- 製造
- 営業
- 管理間接
簡単に説明すると、メカ・エレキ・ソフト設計は、実際に装置を設計する仕事です。
メカ設計は装置の構造や筐体設計を、エレキ設計は基板や回路の設計を、ソフト設計はプログラムの設計をそれぞれ担当します。
上記の中で、半導体業界特有なのがプロセス開発。
半導体製造装置では、特殊なガスや薬品を使ってシリコンウェーハ上に回路パターンを形成します。
そこで、どういう化学成分をどういう条件で反応させれば、目的の結果を得られるかを考えるのがプロセスエンジニアの仕事です。
実際にお客さん(半導体メーカー)と打ち合わせしながら仕事を進めることになります。
また、半導体メーカーは海外の企業が多いため、プロセスエンジニアや営業のようにお客さんと近い職種は、英語を使う機会も多いです。
海外出張や駐在もあるので、海外で働きたい方にはおすすめの職種かなと思います。
半導体業界の働き方
ここでは、半導体業界の働き方として、年収・残業時間・勤務地の3つを紹介していきます。
具体的には、僕自身の経験談です。
僕(修士卒・半導体製造装置メーカー5年目)の年収・残業時間・勤務地は以下のとおり。
- 年収:600〜800万円
- 残業:50h/月
- 勤務地:地方の工場勤務
年収
半導体業界は、全体的に年収が高い企業が多いです。
僕が働く半導体製造装置業界でみると、2021年の平均年収ランキングで11位レーザーテック(1,310万円)、20位東京エレクトロン(1,179万円)、57位アドバンテスト(980万円)、64位ディスコ(965万円)と、トップ100に4社もランクインしています。
高年収の理由はいくつかありますが、その1つは利益率が高いこと。
半導体製造には、高い技術力やノウハウが必要であり、他社が簡単にはマネできないという強みがあります。
したがって、製品の価格を高く設定することができ(高くでも売れる)、利益率が上がって僕たち社員の給料も上がるという仕組みです。
ちなみに、半導体製造装置の値段は1台あたり数億〜数百億円にもなります。
残業時間
一方、年収が高い分、残業も多いのが半導体業界の特徴です。
職種や所属する部署にもよりますが、僕の場合は少なくても月30時間、多いときは月60〜70時間残業することもあります。
とはいえ、仕事内容は単純な事務作業ではなく、最先端の設計・開発に携わるものなので、仕事が好きだったり、働いてガンガン稼ぎたいという方には向いているかなと思います。
勤務地
半導体関連企業の勤務地は、一部を除いて地方の工場勤務になることが多いです。
たとえば、国内1位の半導体メーカーであるキオクシアは三重県の四日市に工場がありますし、ソニーの半導体関連会社であるソニーセミコンダクタマニュファクチャリングは熊本に工場があります。
また、Intel(アメリカ)やサムスン(韓国)、TSMC(台湾)といった海外メーカーも多いので、製造装置メーカーなら、これらの企業へ出張に行ったり、海外駐在として現地サポートを任される機会もあります。
ちなみに、一部の事務系職種や営業職の場合は、本社勤務(東京が多い)になります。
半導体業界の動向と将来性
直近(記事を書いている2022年現在)の動向としては、新型コロナによるリモートワークの普及で半導体の需要が急増した局面から、需要減に転じるという予測があるそうです(ネットニュースの記事によると)。
ただ、実際に働いている側からすると、こうした動向はあまり関係なく、仕事は常に忙しいというのが実情。
業績によってボーナスの上下はありますが、僕みたいに設計・開発の仕事だと、業績に関係なく常に新規開発なので仕事がなくなることはありません。
もちろん、ボーナスが多いと嬉しいですし、仕事のモチベーションも上がります。
2019年〜2022年は業績的にもかなり良い年なので、さきほど紹介した僕のボーナスも、かなり盛られてると思ってください。。
また、半導体業界の将来性は高いというのも、一般的によく言われています。
これは、リモートワークによる需要増のほか、IoTやDX(デジタルトランスフォーメーション)、自動運転の発展によって、今後も半導体はますます必要になるからです。
実際働いていても、新しい製造装置に対する要求はどんどん出てくるので、「僕たちの頑張り次第で将来性が決まる」と考えると、やりがいのある業界かなと感じています。
デジタルトランスフォーメーションの略。
デジタル技術を用いて、生活やビジネスを改革・変容させること。
※2023年10月追記
上記に書いたとおり、2023年現在はコロナによる巣ごもり需要の反動で、半導体の需要はやや落ち着いています。
とくに、データを記憶するのに使われるメモリ半導体でその傾向が顕著で、NAND型フラッシュメモリで世界シェア2位を獲得するキオクシアは、市況悪化による人員削減を発表しています。
実際僕の会社でも、人員削減はないものの、ボーナスは昨年より下がりました。
半導体業界には「シリコンサイクル」という景気の上げ下げがあるので、こうした状況は避けられないと言えそうです。
ただし、長期的には半導体の需要はまだまだ拡大する見込み。
上で挙げたIoTやDXのほか、AI、自動運転、EV、5G、スマートシティ、カーボンニュートラル・・・など、今後はあらゆるものに半導体が使われるため、2022年に約6000億ドルだった市場規模は、2030年には1兆ドルになると言われています。
■半導体市場規模予測
— はく|半導体業界の企業解説 (@nanamemo_net) September 11, 2023
2022年(今)→ 2030年(予測)
①半導体市場全体:6000億ドル → 1兆ドル
②パワー半導体:240億ドル → 370億ドル
③半導体製造装置:1000億ドル → 2000億ドル
④半導体材料:700億ドル → 1050億ドル
ちなみに、日本の自動車業界の市場規模が64兆円(約4500億ドル)です😲
半導体業界の転職事情
2023年時点における半導体業界の転職事情をまとめると、以下のとおりです。
- 新卒採用・中途採用ともに増加傾向
- とくに業界経験者は引く手あまた
- 人手不足で未経験採用も増加中
- ただし、エンジニア求人は地方勤務が多い
さきほど説明したとおり、半導体市場は長期的にまだまだ拡大傾向です。
したがって、企業は採用人数を増やす傾向にあり、新卒採用・中途採用ともに数を増やす企業が多いのが特徴。
たとえば、半導体製造装置メーカーで国内首位の東京エレクトロンを見ると、中途採用人数は2021年が400名、2022年が580名と大幅に増加しています。
ただし、直近の2023年は、さきほど言った半導体需要の一巡により、中途採用を少し抑えて、新卒採用に力を入れている印象。
僕の会社でも、以前は「転職活動をしている知人がいれば紹介してください」という募集がよく回っていましたが、最近は見なくなりました。
したがって、中途採用の場合は業界経験者か、未経験でもAI開発や要素研究など、ピンポイントで活かせる経験やスキルを持った人材が重宝されると思います。
勤務地については、すでに説明したとおり、地方の工場や開発拠点になることが多いです。
とくに僕と同じエンジニア職は、一部の企業を除いてほぼ地方勤務になると思っておいた方がいいでしょう。
半導体業界に転職する方法
ずばり、半導体業界に転職する方法は2つです。
転職サイト・エージェントを使う
転職サイトと転職エージェントの違いは、簡単に言うと、求人をサイトから自分で探すか、エージェントに紹介してもらうかということ。
転職サイトでは、多数の求人の中から職種や勤務地などを絞り込んで、自分に合った仕事を探すことができます。
一方の転職エージェントは、キャリアアドバイザーが、企業が求める人材と求職者をマッチングさせる形で、求人を紹介してくれます。
求人サイトに掲載されていない非公開求人を紹介してくれたり、履歴書や面接のサポートもしてくれるので、すでに「半導体業界に転職したい」と決めているなら、転職エージェントを利用するのがおすすめ。
大手のエージェントと、業界特化型のエージェントをそれぞれ登録しておくのが良いです。
※マイナビのプロモーションを含みます。
知り合いに紹介してもらう
もう1つは、すでに半導体業界で働いている知り合いに紹介してもらう方法です。
半導体業界は、人手不足ということもあって、社員の紹介による中途採用を募集してたりします。
実際、僕の会社も「転職を希望する友人がいれば紹介してください」という案内が、よく回ってきます。
知り合いが働いてれば、仕事内容や給料、残業について詳しく聞けるのがメリット。
事前に働き方がわかるので、入社後のギャップが少なく早く会社に馴染めるのが良い点でしょう。
ちなみに、僕の会社でも中途採用を募集しているので、興味がある方は僕のTwitterかInstagramに連絡いただければ、記事には書いていないもう少し深い内容をお話します。
半導体業界に転職するために必要な経歴・スキル
新卒の場合は未経験でもOKですが、中途の場合は応募する職種で3年以上の経験は必要かなと思います。
たとえば、製造装置メーカーのメカ設計に転職したい場合は、「自動車メーカーでエンジンの設計を10年やっていた」「カメラの筐体設計を5年やっていた」といった感じ。
半導体業界は初めてでも、その職種での経験やスキルは必要です。
また、半導体関連の技術やスキルの経験がある場合は、なお有利でしょう。
具体的には、半導体製造は真空状態で行われますし、特殊なガスや薬液を使ったり、化学反応を用いたりします。
したがって、真空装置やポンプに詳しい、熱流体解析ができる、材料に詳しい、、、などのスキルがあれば、未経験でも優遇されます。
まとめ:半導体業界への転職を成功させよう
以上、半導体業界への転職方法として、僕の経験をもとにお話しました。
半導体業界に限らず、転職活動には不安や疑問がたくさんあると思います。
転職に関する悩みは、やはり経験者や専門のアドバイザーに聞いてみるのが一番の解決策。
半導体業界への転職に少しでも興味がある方は、まずは転職エージェントに登録して相談してみることをおすすめします。
もちろん、記事のコメント欄(または僕のTwitter、Instagram)に質問していただいてもOKです!
お知らせ
半導体業界の企業が検索できるサイトを作りました。
業種・年収・勤務地・残業時間・・・などから企業を絞り込んで検索できます。
半導体業界への就職・転職を考えている方は、ぜひ使ってみてください。
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