「半導体製造装置について勉強したい」
「CMPってどんなプロセス?」
「具体的な処理内容や装置の仕組みを教えてほしい」
このような疑問にお答えします。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在は半導体製造装置メーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、半導体製造装置を学ぶ第7ステップとして「CMP装置の特徴」をわかりやすく解説します。
この記事を読むとわかること。
- CMPプロセスの内容がわかる
- CMP装置の仕組みがわかる
- CMPに強い製造装置メーカーがわかる
CMP装置は、半導体プロセスの中でも比較的新しく導入された装置です。
微細化・多層配線に欠かせない技術ですので、確実に知っておくべき内容。
今回は、そんなCMP装置の仕組みと特徴をわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
CMP装置の特徴
CMPとは、Chemical Mechanical Polishingの略で、日本語では「平坦化」と呼ばれます。
具体的には、ウェーハ表面を研磨して平坦にするプロセスです。
CMP装置の構成は上図のとおり。
ウェーハ裏面をプラテンと呼ばれる治具に吸着させ、表面を研磨パッドに押し当てます。
パッドには上には、スラリーと呼ばれる薬液を流し、薬液の化学的作用(Chemical)と研磨パッドの物理的作用(Mechanical)によってウェーハを研磨(Polishing)する仕組みです。
スラリーが研磨パッド上に目詰まりするのを防ぐため、ドレッサー(コンディショナーとも言う)と呼ばれるパーツがついています。
また、ウェーハの周囲にはリテーナーリングと呼ばれるリング状の部品があり、研磨パッドがウェーハに均一に当たるような構造になっています。
部品を加工・組み立てする際に使用する補助パーツのこと。
CMP装置の周辺部品
さきほど説明したように、CMP装置には様々な周辺パーツが存在します。
ここでは、簡単に各パーツの役割や仕組みを解説します。
研磨パッド
研磨パッドは、実際にウェーハを研磨するパッドです。
材質によって硬質パッドと軟質パッドがあり、研磨する材料に合わせて使い分けます。
パッドは使用しているうちに摩耗するため、耐用寿命が課題です。
また、研磨パッドには、スラリー保持とウェーハ吸着防止のための溝が刻まれています。
溝形状は格子状や同心円状などがあり、半導体メーカーのノウハウとなる部分です。
スラリー
スラリーは、シリカやアルミナといった研磨粒子を薬液に混ぜたものです。
こちらも研磨する材料ごとに使い分ける必要があります。
研磨終了後、スラリーがウェーハ表面に残留したまま乾燥させると、固着して除去できなくなります。
したがって、研磨終了後は浄装置でスラリーを除去する工程が必要。
この洗浄装置は、CMP装置と一体化されています。
ドレッサー
ドレッサーは、研磨パッドの中にスラリーやCMPの加工くずが目詰まりするのを防ぐためのパーツです。
ドレッサーにはダイヤモンド粒子が埋め込んであり、それでパッド表面を機械的に削ります。
リテーナーリング
リテーナーリングは、研磨の均一性をコントロールするためのリング状のパーツです。
研磨パッドをウェーハに押し当てると、外周が他よりも多く研磨される「ふちだれ」が発生します。
そこで、ウェーハ外周にリテーナーリングを取り付けることで、研磨パッドがウェーハに均一に当たり、ふちだれを防止できます。
CMP装置のシェアが高いメーカー
さいごに、CMP装置をつくっている製造装置メーカーにはどんな会社があるかを紹介して記事を終わりたいと思います。
CMP装置のシェアが高いメーカーは、アメリカのアプライドマテリアルズ、日本の荏原製作所などです。
アプライドマテリアルズ(AMAT)
アプライドマテリアルズは、アメリカのカリフォルニア州シリコンバレーに本社を置く世界第1位の半導体製造装置メーカーです。
CMP装置では過半数を超えるシェアで1位を獲得しています。
荏原製作所
荏原製作所は、東京に本社を置く電気機械メーカーです。
CMP装置ではAMATに次ぐシェア2位を獲得しています。
また、半導体製造装置のほかにポンプやタービンなどの風水力機械、浄水・排水処設備なども製造しています。
まとめ:CMP装置の役割はウェーハ表面を平坦化すること
記事の内容をまとめます。
- CMPは、ウェーハ表面を研磨して平坦化するプロセス
- スラリーの化学的作用と、研磨パッドの物理的作用によってウェーハを研磨する
- ドレッサーの役割は、スラリーが研磨パッドに目詰まりするのを防ぐこと
- リテーナーリングの役割は、研磨パッドがウェーハに均一に当たるようにすること
- CMP装置でシェアが高い製造装置メーカーは、アメリカのAMATと日本の荏原製作所
以上です。
CMP装置は、半導体の微細化・多層配線化に欠かせない技術。
リテーナーリングのような均一に研磨するための工夫は、僕の本職である機械設計にも活かせる技術です。
記事を読んでいる方も、CMP装置で使われている技術がその他のプロセスに応用できないか考えてみると面白いかもしれませんね!
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