「金属の錆はどんなメカニズムで発生する?」
「錆の原因と対策が知りたい」
このような疑問を解決します。
こんにちは。機械設計エンジニアのはくです。
2019年に機械系の大学院を卒業し、現在はメーカーで機械設計エンジニアとして働いています。
本記事では、「錆発生のメカニズム」について解説します。
この記事を読むとわかること。
- 錆とはどのような現象かがわかる
- 錆発生のメカニズムがわかる
- 錆の原因と対策がわかる
金属が水に触れたり、長い間空気中の酸素に触れることで発生する「錆(サビ)」
なんとなく「錆 = 悪いモノ」というイメージがありますが、実は金属の錆には「良い錆」と「悪い錆」があります。
今回は、そんな錆の原因と対策をわかりやすく解説します。
金属の錆や腐食で困っているという方は、ぜひ記事の内容を参考にしてください。
錆とは
錆は、金属表面が水・酸素と反応することで発生します。
錆にはいくつか種類があり、普段の生活でよく見る鉄の錆は、赤錆という悪性の錆です。
また、黒錆は人工的に発生させる錆で、赤錆を防ぐ良性の錆となります。
赤錆
酸化第二鉄(Fe2O3)でできた赤い錆。
赤錆は膜にすき間が多いため、すき間から水と酸素が入り込んで錆が侵食し、母体をボロボロにしてしまいます。
したがって、機械設計で鉄を使う場合は、適切な防錆対策が必要です。
黒錆
四酸化三鉄(Fe3O4)でできた黒い錆。
黒錆は、自然現象では発生しない良性の錆です。
赤錆と違って表面にすき間がない膜なので、金属を水や酸素から保護し、赤錆の発生を防ぎます。
鉄を高温に加熱して空気中の酸素と結びつける方法と、めっきにより強制的に膜を形成する方法(黒染め)があります。
青錆
銅の酸化によって発生する青緑色の錆で、「緑青(ロクショウ)」とも呼ばれます。
街中にある例だと、鎌倉の大仏や、アメリカの自由の女神像が有名です。
白錆
アルミニウムや亜鉛の酸化によって発生する白色の錆のこと。
アルミや鉄の合金であるステンレスは錆びないイメージがありますが、実はどちらもすでに錆びています。
たとえば、アルミは空気中の酸素と結びつき緻密な酸化アルミニウムの膜(不動態皮膜と呼ぶ)を形成します。
この酸化膜が金属表面を覆うことで、水分や酸素から保護しているのです。
一方、この膜に水分がかかると、酸化アルミニウムが水和酸化物に変化します。
これが白錆です。
したがって、白錆は雨のあたる場所や、湿気の多い場所などで発生しやすいですが、耐食性にはほぼ影響がないとされています。
錆発生のメカニズム
冒頭で説明したように、錆(赤錆)が発生する原因は鉄の酸化です。
具体的なメカニズムは下記のとおり。
①金属表面に水分が付着し、空気中の酸素を吸収する
②水分中に鉄イオンが溶け出し、電子を放出する
Fe → Fe2+ + 2e–
③水分中の酸素が電子と結びつき、水酸化イオンに変化する
1/2O2 + H2O + 2e– → 2OH–
④鉄イオンと水酸化イオンが反応して、水酸化鉄(Ⅱ)の錆を生成する
Fe2+ + 2OH– → Fe(OH)2
⑤水酸化鉄(Ⅱ)が、水分中の酸素で参加されて水酸化鉄(Ⅲ)の赤錆を発生する
2Fe(OH)2 + H2O + 1/2O2 → Fe(OH)3
水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3は、Fe2O3・H2Oとも表されます。
このFe2O3が赤錆の主成分です。
錆の対策5つ
さいごに、悪性の錆である赤錆の対策方法を5つ紹介します。
①錆びにくい材料を選定する
アルミニウムやステンレスは、さきほど説明した不動態皮膜を形成するので、錆びにくいです。
ただし、強度や重さ、価格が異なってくるため、使用条件に合わせて適切な材料を選定する必要があります。
②防錆剤を塗布する
表面に油やグリスなどの防錆剤を塗布することで、錆の発生を防ぐことができます。
ただし、表面が汚れるためクリーン度が要求される部品には使えません。
また、防錆剤は定期的に再塗布する必要があるため、メンテナンスの手間がかかります。
③めっき・塗装をする
①②の方法が使えない時は、表面処理を施します。
めっきは材料によって様々な手法が選択できるので、防錆対策としてもよく使われています。
また、塗装は色のバリエーションが豊富ですが、膜圧が厚くなるため精密部品には使えません。
④真空梱包する
真空梱包は、食品によく使われる方法です。
真空パックすることで、食品を水分と酸素から遮断し、鮮度を保つことができます。
⑤錆びにくい環境下で使用する
室内で使う部品の場合は、湿度管理することで錆の発生を防ぐこともできます。
反対に言うと、鉄製品を外で使う場合は、必ず防錆対策が必要です。
まとめ:錆発生のメカニズムを理解して、対策しよう!
記事の内容をまとめます。
- 錆は、金属表面が水・酸素と反応することで発生する
- 鉄の錆には、悪性の赤錆と良性の黒錆がある
- 銅の錆は青錆、亜鉛やアルミニウムの錆は白錆と言う
- 防錆対策としては、錆びにくい材料の選定・防錆剤の塗布・めっき・塗装・真空梱包などの方法がある
以上です。
今回は、錆発生の原因と対策を紹介しました。
基本的に、大気中で鉄を選定する場合は、適切な防錆対策が必要。
金属の錆や腐食で困っているという方は、ぜひ今回紹介した内容を参考にしてみてください!
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