「機械工学科を卒業したら、どんな仕事をするの?」
「機械設計エンジニアへの転職を考えているけど、年収や残業時間が気になる」
「入社1年目はどうやって仕事を覚えていくんだろう…」
このような疑問にお答えします。
こんにちは、機械エンジニアのはくです。
普段は製造装置メーカーで、機械設計の仕事をしています。
本記事では、現役の機械設計士である僕が「機械設計エンジニアの仕事内容」を紹介します。
年収や残業時間から、具体的な仕事内容、必要なスキル、やりがいまで、これから機械設計士として働く方に知ってもらいたい内容です。
この記事を読めば、あなたが機械設計士として就職・転職した場合に、どんな仕事をしてどんな働き方をするかがイメージできるかと思います。
僕の経歴
本題に入る前に、僕の経歴を少しだけ。
- 2013年:国立大学の機械工学科に入学
- 2017年:大学院に進学
- 2019年:半導体製造装置メーカーに機械設計エンジニアとして就職
- 2020年:機械設計エンジニア2年目として働く
僕は2019年の4月から、製造装置メーカーの機械設計エンジニアとして働いています。
この記事を書いている現在は、社会人2年目。
機械設計士としてまだまだ半人前なので、日々勉強したことや、仕事でわからなくて困ったことなどを、このブログで発信しています。
大学時代は理系で、機械工学を専攻していました。
といっても、もともと機械やものづくりが好きだったわけではありません。
学生時代は勉強もほどほどに、部活(バスケ部)ばかりしている学生でした。
就職先は「年収が高いから」という理由で半導体業界を選びましたが、元々ものづくりに興味がなく、仕事についていけなかったこともあり、2年目の4月に今の会社を一度やめようとしています。
このあたりの経緯は下記記事で話しているので、よければ読んでみてください。
この記事では、以前の僕のように「機械に詳しくない・ものづくりに興味がない」といった方にもわかるよう、なるべく丁寧に解説します。
「もっと突っ込んだ話が聞きたい」という方は、TwitterやInstagramで聞いてもらえれば返信しますのでお気軽にどうぞ。
機械設計エンジニアとは
本題に入ります。
機械設計士は、エンジニアの一種です。
”エンジニア”と聞くと、プログラマーのような「ITエンジニア」を想像しするかもしれませんが、僕たち機械設計エンジニアはプログラミングは使いません。
CAD(Computer Aided Design)というソフトを使って、製品や装置の設計をするのが機械設計エンジニアの仕事です。
エンジニアは、「目に見えるモノを設計するハードウェアエンジニア」と、「モノを動かすためのプログラムを設計するソフトウェアエンジニア」の2種類に大きくわかれます。
たとえば、自動車のボディやエンジンを設計するのがハードウェアエンジニア、自動運転のプログラムを組むのがソフトウェアエンジニアです。
さらに、ハードウェアエンジニアは、製品の構造を設計する機械設計エンジニアと、回路や基板の設計をする電気設計エンジニアに分かれます。
世の中にある多くの製品は、まずモノ(機械)があり、電気を動力として、プログラムで動きます。
したがって、1つの製品をつくり上げるには、ハードウェアとソフトウェアエンジニア両方の力が必要なのです。
さらに機械設計は、動きのないモノを設計する構造設計と、動きのあるモノを設計する機構設計にわかれます。
たとえば、車のボディやフレームを設計するのが構造設計、駆動部やロボットのアームを設計するのが機構設計です。
また、構造設計の中でも製品の外装を設計する仕事を筐体設計と言います。
詳しく知りたい方は、下記記事をどうぞ。
機械設計エンジニアの仕事内容
あなたは「設計」と聞いて、どんな仕事内容をイメージしますか?
僕たち機械設計の仕事は、下記の5つのステップで進みます。
会社によって設計する「モノ」は違いますが、手順はだいたい同じです。
- 構想設計
- 基本設計
- デザインレビュー
- 詳細設計
- 検証・評価
構想設計
構想設計とは、「どのような製品にするか」というコンセプトを決めること。
モノを設計する場合は、いきなりコンピュータでモデルをつくるのではなく、まず製品のコンセプトを決める必要があります。
具体的には、形状・サイズ・コスト・材質・機能などです。
たとえば、テーブルを設計する場合なら、「何人用のテーブルか」「丸いテーブルにするか、四角いテーブルにするか」「足は何本にするか」「いくらで販売するか」といった感じ。
機械設計エンジニアだけで決めるのではなく、営業やマーケティング、あるいはお客さんなど、関係者と打ち合わせをしながら決定していきます。
基本設計
製品のコンセプトを決めたら、つぎは基本設計です。
基本設計では、構想設計で決めたコンセプトにしたがって、実際にコンピュータ上でモデルを作成(設計)していきます。
もちろん、適当に決めればいいわけではなく、強度や耐熱性、組み立てやすさ、電気系やソフト系への影響など、様々なことを考慮しなければいけません。
ここで必要なのは、大学の機械工学科で習う4大力学(材料力学・熱力学・流体力学・機械力学)です。
また、材料をどうやって加工するかという機械加工の知識、使用するネジや軸受を選定するための機械要素の知識なども使います。
デザインレビュー
基本設計が終わったら、「デザインレビュー」を実施します。
デザインレビューはDRと略されることが多いです。
DRでは、基本設計で決めた内容を関係者に説明して、設計(デザイン)に問題がないことを再確認(レビュー)します。
「組み立てづらい」「強度が不十分」「コストが高い」などがあれば、ここで修正します。
最終的に問題がないことが確認できれば、責任者から承認をもらって、詳細設計・出図へ移行します。
詳細設計
詳細設計では、設計した製品を加工するための設計図面を作成します。
図面を描く作業を「出図」や「バラシ」と言います。
設計した部品は、僕たち機械設計エンジニアが旋盤やフライス盤を使って加工するのではなく、専門の加工業者に依頼するのが普通です。
加工業者は、機械エンジニアが描いた設計図面を見て部品を加工するので、「見やすい図面」を描くことが求められます。
そのために必要なのが製図の知識です。
図面の描き方は、JIS(日本工業規格)というルールで決まっています。
機械エンジニアは、この製図のルールを覚えることが必要です。
検証・評価
設計した部品が完成したら、社内で検証を行います。
設計どおりに部品が組み上がるか、組立手順に問題がないか、電気系統やプログラムが正常に動作するかなどのチェックです。
また、組立に問題がないことを確認したら、製品の耐久性や性能の評価を行います。
たとえばモーターなら、何回点したら壊れるか、製品本体の温度が何度になるか、ど。
実際に動作させてみると、設計の時点ではわからなかった問題が発生することもあるので、きちんと評価しておくことが大切です。
以上5つが、僕たち機械設計エンジニアの主な仕事内容です。
最終的に問題がなければ、設計した製品が出荷されてお客さんの手元に届きます。
必要な知識が幅広く、業務量も多いので大変ですが、自分が設計した製品が世に出る瞬間は、機械設計エンジニアのやりがいの1つ。
僕のまわりでも、元々ものづくりが好きという人が多いです。
僕(機械設計2年目)の年収と残業時間
ネットで検索すると、「機械設計の仕事は、年収が高いけど残業も多い」と言われています。
ここでは参考として、僕(機械設計2年目)の給料と残業時間を紹介します。
- 基本給:22万円/月
- 残業時間:30〜60時間/月
上記のとおり。
残業代を入れると、手取りで月25万円くらいです。
社会人2年目の平均よりは多いんじゃないかと思います。
残業時間は、少ない月でも30時間くらいあります。
僕のまわりの先輩も、同じかそれ以上は残業しているので、機械設計エンジニアの残業時間は比較的多いです。
ただし、僕が働いている半導体業界は、年収が高く残業時間が多い傾向です。
あくまでも参考としてみていただければと思います。
入社1年目の仕事内容
「新卒で機械設計として就職する」、あるいは「未経験だけど機械設計に転職する」という方のために、入社1年目の仕事内容を紹介します。
機械設計エンジニアとして就職すると、1年目は先輩社員のサポートをしながら仕事を覚えていきます。
カンタンな部品を設計しながら、製図のルールやCADの操作方法を覚えていく感じです。
未経験で転職を考えているは、入社前に製図のルールを勉強しておくと、スムーズに業務に入れると思います。
設計をしていると、わからないことがメチャクチャいっぱい出てくるので、その都度ネットで調べたり、先輩に聞きながら勉強していきます。
ぶっちゃけ1年目は、実際の設計業務よりも勉強時間の方が多いです。
僕自身、入社1年目は仕事の進め方が全くわからず、「自分は機械設計に向いていないな」と感じて、転職寸前までいきました^^;
「わからないことがあったら先輩に聞くこと」
新人のうちはこれが一番大切かなと思います。
機械設計エンジニアに必要なスキル
僕が機械設計の仕事をしていて感じる、「機械設計エンジニアに必要なスキル」は2つです。
- 機械設計の知識
- エンジニアとしての考え方
詳しくは下記で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
機械設計エンジニアの未来を考えてみた
ネットで「機械設計」と検索すると、「機械設計 なくなる」や「機械設計 今後」というワードが出てくるので、これに対する僕の意見を紹介します。
結論として、「機械設計の仕事は今後もなくならない」というのが、僕の考えです。
機械設計の仕事1〜5のうち、2の基本設計はAIにはできないと考えています。
たとえば、「こういう製品がつくりたい」という情報を入力したら、自動で設計をしてくれるAIができたとします。
この場合、AIは要求を満たす最適な設計をしてくれますが、それが必ずしも実際の製品として使えるとはかぎりません。
実際には、寸法が細かすぎて加工できない、構造が複雑で組み立てられない、コストが高い材料ばかり選定している、などの問題が発生するからです。
これらの問題を解決するためには、やはり僕たち機械設計エンジニアが必要になります。
正確には、「知識と経験を持った機械設計エンジニア」です。
AIが計算した設計を参考にしつつ、要求にあった最適な設計ができるエンジニアになれれば、僕たちの未来は明るいと考えています。
機械設計の仕事は大変だけど、得られるものも多い
記事の内容をまとめます。
- 機械設計の仕事はハードウェアエンジニアに分類される
- 機械設計の仕事内容は、「1構想設計→2基本設計→3デザインレビュー→4詳細設計→5検証」と進む
- 機械設計エンジニアは年収が高いけど、残業も多い
- 入社1年目は、簡単な設計をしながら図面の描き方やCADの操作方法を覚える
- 機械設計エンジニアに必要な知識は、製図、CADの操作、4大力学、機械加工、機械要素、材料など幅広い
- 知識と経験を持った機械設計エンジニアは、今後もなくならない
以上です。
機械設計は覚えることも多く大変ですが、その分スキルや経験が身につく仕事です。
自分のアイデアを形にできるので、ものづくりが好きな人にはやりがいの感じられる仕事といえます。
このブログでは、機械設計の働き方や仕事術に関する情報を発信しています。
コメント
機械設計エンジニアの仕事内容の記事を読ませていただきました!
一つ質問があるのですが、機械設計エンジニア(ハードウェアエンジニア)に制御工学は必要でしょうか?
自分は今年度機械工の3年生で、制御工学をとるべきか悩んでいます。
制御工学では伝達関数やらブロック線図やら、フィードバック制御系の設計方法やらを学ぶそうですが、これらはソフトウェアエンジニアの仕事で、そこの専門的なことは彼らに任せて、自分は、はくさんの記事に書いてあるような仕事をするのだろうくらいの認識でいます。
4力が大事なのは言わずもがなと思いますが、はくさんが大学の頃はそういった授業や研究をなされたのかなどお聞かせ頂ければと思い質問しました。ちなみに自分はプラント設計か、建設機械の設計や生産に携わりたいと思っています!
ご質問ありがとうございます。
制御工学はどちらかというとエレキやソフト的な内容ですが、機械設計エンジニアも理解しておくべき知識です。
というのも、機械設計の仕事は、エレキエンジニアやソフトエンジニアなど各担当者とのコミュニケーションが頻繁に発生するから。
そのため、エレキやソフトの内容もある程度理解しておかないと、会議についていけず、うまく連携が取れないといった事態になってしまいます。
ちなみに僕は大学の頃、ここら辺の勉強をあまりしていなかったので、会議や打ち合わせでわからない点があれば、あとでコッソリ調べたりしています…。
プラント設計や建設機械の設計についてはあまり詳しくないのでわかりませんが、「動くモノ」を設計する場合には、制御工学は必要な知識だと思います。
制御工学の「専門家」になる必要はないですが、概念だけでも理解しておくと、機械設計の仕事で役に立つはずです。
ご回答ありがとうございます!
とても参考になりました。製品を完成させる間にはより豊富な知識によって円滑に進むことがあるのですね。制御工学もその土台の一つとして学んでみようかと思いました。
お忙しい中本当にありがとうございます。